

ケアGO
介護業界特化AI SaaSの開発
ケアGOは、訪問介護の現場で負担になりやすい書類作成・紙管理を支援する、介護業界特化のAI SaaSです。
アセスメント、サービス提供計画書、モニタリングなどの専門書類作成に加え、会議・面談の録音、文字起こし、議事録化、書類スキャン、電子サイン、クラウド保管までを一つの業務フローとして扱えるよう設計されています。
弊社は、画像・PDFの読み取り、音声文字起こし、議事録化、書類生成などを用途別のAIモデルで組み合わせ、訪問介護の実務に沿ったプロダクトとしてケアGOを実装しました。
この記事では、ケアGOのサービスの魅力と、その裏側で弊社がクライアントの要望をどのように噛み砕き、AI SaaSとして業務に落とし込んでいったのかを紹介します。
■開発前の課題: 書類作成と紙管理が現場の負担になっていた
訪問介護の現場では、アセスメント、計画書、モニタリングなど、専門的な書類が継続的に発生します。これらは単純な事務作業として切り出しにくく、現場を理解しているサービス提供責任者が確認しながら進める必要があります。
一方で、紙や書庫を前提にした管理では、複数事業所での運用や全国展開を見据えたときに、書類の所在、更新状況、承認状況を把握しづらいという課題がありました。ケアGOでは、この業務負担をAIとクラウドでどう減らすかを開発テーマにしました。
■依頼されたものをそのまま作らず、業務全体が回る形に組み替える
ケアGOの初期構想では、普段お使いのシステムへ書類を転記する、RPA的な自動化のご依頼をいただいていました。
ただ、プロジェクトが進むなかで、ご要望は少しずつ変わっていきました。途中で転記中心の進め方を見直したいというお話が出たり、電子署名を加えたいというご要望が挙がったり。アリガトサンが大切にしたのは、こうした一つひとつの変化をそのまま機能に足し込むことではなく、「なぜそれが必要とされているのか」という業務上の目的まで遡って捉え直すことでした。
訪問介護の書類業務は、作成・確認・修正・署名・保管といった工程が途切れず連続して、はじめて回ります。転記の自動化も、署名の電子化も、突き詰めれば「この一連の流れを止めず、現場で使い続けられる状態にしたい」という同じゴールに行き着きます。
そこで、この目的をより確実に満たす手段として、転記を前提とした構成ではなく、ケアGO側に必要な機能を組み込み、クラウド上で一連の業務が完結する形へと設計を発展させました。途中で挙がったご要望も、その狙いを汲み取りながら、現場の業務全体が破綻なく回る一つの仕組みへと束ねています。
移り変わるご要望に応えるだけでなく、その背景にある目的まで汲み取り、現場で使い続けられる構造へと昇華させること。アリガトサンが価値置いているのは、この部分です。


■AIに任せ切らず、人間確認を前提にした業務設計
介護書類は、形式が合っていればよいだけの書類ではありません。利用者の状態、介護計画、サービス提供の文脈を踏まえて、現場の担当者が確認する必要があります。そのため、ケアGOではAIが書類を確定するのではなく、AIが下書きを作り、人が確認・修正して仕上げる設計にしています。
書類プレビューにAI出力を表示し、その場で確認・修正できるようにすることで、AIの生成速度を活かしながら、現場が責任を持って内容を確認できるフローにしました。これは、介護業界のように専門性と正確性が求められる領域でAIを実務導入するうえで重要な設計判断です。


■用途別にAIモデルを使い分けるマルチモデル構成
ケアGOでは、単一のAIモデルにすべてを担わせるのではなく、入力の種類と処理内容に応じて、それぞれのタスクに最も適したモデルを使い分けています。ひとつのモデルで「画像の読み取り」「音声の文字起こし」「文章の生成」をすべて高水準でこなすことは難しく、それぞれに得意・不得意があるためです。
画像やPDFの読み取りには、レイアウトの文脈ごと「見て」理解できるマルチモーダル処理に強いGeminiを採用しています。定型化されていないスキャン画像や表組みでも、単なる文字抽出にとどまらず構造を踏まえて読み取れるためです。音声の文字起こしには、専門用語やノイズの多い現場の音声に対しても頑健なWhisperを採用しています。文字起こしは後段すべての品質を左右する起点になるため、認識精度を最優先しました。
そして、文字起こしされたテキストを文脈をふまえて整形し、議事録や書類の下書きとして読める日本語に組み立てる工程には、文章理解と構造化された生成に優れたGPTを採用しています。
それぞれのモデルが最も得意とするタスクに専念できるよう割り当て、各出力を後段へ受け渡すことで、「読み取り」「文字起こし」「議事録化」「書類生成」を一連のパイプラインとして連結しています。技術力として重要なのは、最新のAIモデル名を並べることではなく、各モデルの特性を理解したうえで、業務フローのどの工程に、どのモデルを、どの順番で組み合わせるかを設計している点です。


■アジャイル型開発で、現場知見を拾いながら精度を上げる
ケアGOのような新規SaaSでは、最初から完成形を決め切ることは難しく、要件を机上で固めるだけでは実際の使い勝手が見えません。そのため弊社は、早い段階で触れる形をつくり、実際の操作感や現場の反応をもとに改善を重ねる進め方を取りました。
この進め方の目的は、単に開発スピードを上げることではありません。画面上での確認しやすさ、AI出力の修正しやすさ、議事録機能の精度、書類管理の導線など、使ってみて初めて見える課題を開発サイクルの中で拾い上げることです。動くプロダクトを通じて業務に合う形へ近づけていくことが、弊社のアジャイル型開発の強みです。


■実データをもとに、モデル選定とプロンプトを調整する
AI開発では、モデルを選んだ時点で品質が決まるわけではありません。同じモデルでも、どんなプロンプトを与え、入力をどう整え、出力をどう評価するかによって、実務で使える品質になるかどうかが大きく変わります。ケアGOの議事録機能では、リリース当初の出力を実際の現場データで一つひとつ確認しながら、モデルの差し替えとプロンプトの調整を繰り返し、精度を高めていきました。
介護現場の会話には、専門用語や固有名詞に加えて、現場ごとの独特な言い回しや略語、文脈に依存した表現が数多く含まれます。一般的な文章で学習された汎用モデルをそのまま当てるだけでは、こうした表現を取り違えたり、要点を外したりと、実務に耐えない出力になる場面がありました。そこで私たちは、実際の出力を期待値と照らし合わせて検証し、誤りの傾向を分析したうえで、プロンプトに現場特有の文脈や指示を与える、出力フォーマットを明示する、タスクによってモデルを選び直す、といった調整を重ねました。
こうした「出力を検証し、原因を分析し、プロンプトとモデル選定に反映する」というサイクルを回し続けることで、汎用モデルの出力を、介護現場でそのまま使える議事録の品質へと近づけていきました。技術力として重要なのは、優れたモデルを選ぶことそのものではなく、実データで検証しながら現場の品質に合わせ込んでいく改善のプロセスそのものにあると考えています。
■完成したプロダクト: 書類作成から承認・管理までを一気通貫化
最終的にケアGOは、訪問介護の書類業務を支えるクラウドサービスとして立ち上がりました。
サービス提供責任者は、必要な情報をもとにAIの支援を受けながら書類を作成し、内容を確認・修正して仕上げることができます。
作成した書類はクラウド上で保管・管理され、紙や書庫に依存していた管理から、どの事業所からでも必要な書類にアクセスできる形へ移行できます。さらに電子サインにも対応し、書類のやり取りから承認までを電子で完結できるようにしました。議事録機能のように、現場で生まれた周辺業務を支える機能も加わっています。
社内実証では、従来10時間ほどかかっていた書類作成が1時間ほどに短縮される手応えも出ています。業務効率化だけでなく、AIを活用して業務改善に取り組んでいること自体が、採用や同業他社との接点づくりにもつながるプロダクトになっています。




ケアGOは、現場課題を起点に、業界固有の実務へ合わせ込んだAI SaaS開発の事例です。元々の要望をそのまま実装するのではなく、業務フロー、現場確認、AIモデルの役割、クラウド管理の導線までを整理し、プロダクトとして使い続けられる形に設計しました。
弊社では、アイディア段階の相談から、AI SaaSの設計・開発・改善まで伴走しています。中小企業のIT責任者やDX担当にとって、ケアGOは「AIを業務に落とし込める技術力」と「曖昧な要望を実装可能なプロダクトへ翻訳する力」を確認できる開発実績です。
■クライアントインタビュー


株式会社YKT Innovation様のインタビュー記事「完成形が見えないからこそ、早く形にして試す」はこちらからご覧いただけます。
CREDIT
CLIENT : 株式会社YKT INNOVATION
PROJECT MANAGEMENT : SHUTO NAKAMURA / RYO YOSHIKAWA
DEVELOPMENT : KATSUYA TAKAHASHI
SCOPE
REQUIREMENTS / UI/UX / AI SAAS / DOCUMENT SYSTEM / E-SIGN / CLOUD STORAGE / RELEASE / IMPROVEMENT
TERM
2025.11 ~ 2026.3




